相続時精算課税制度とは?(制度のわかりやすい説明)
生前に贈与した財産を、将来の相続時にまとめて精算する制度
通常、誰かから財産をもらうと贈与税がかかりますが、この相続時精算課税制度を選択すると、最大2,500万円までの贈与には贈与税がかかりません。その代わりに贈与した人が亡くなった時に、贈与した金額をその亡くなった人の相続財産に足し戻して相続税を計算します。
主な利用条件
贈与する人(親・祖父母): 贈与する年の1月1日時点で60歳以上。
もらう人(子・孫): 贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上。
手続き: 贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までに、税務署へ「相続時精算課税選択届出書」を提出する必要があります。
令和6年からの「新ルール」の活用法
これまでは、1円でもこの制度で贈与すると、将来すべて相続財産に足し戻されていました。しかし、2024年1月からは「年間110万円の基礎控除」が新設されました。 一年間の贈与金額の110万円については贈与税がかからないのはもちろん、将来の相続財産に足し戻す必要もありません。これにより、これまで主流だった「暦年課税(普通の生前贈与)」の良いところを併せ持つ制度になりました。
70代という年齢は、お子様が30代〜40代になり、住宅購入や教育費などでまとまった資金を必要としている時期ではないでしょうか。また、皆様ご自身も「将来の相続税がどれくらいかかるか」が数値として見え始める時期です。
この制度が70代に選ばれる最大の理由は、「値上がりする資産」や「収益を生む資産」を、今の価値で固定して子供に移せる点にあります。それはこういうことです。
例えば、現在2,000万円の土地をこの制度で子供に贈与したとします。将来、皆様が亡くなった時にその土地が3,000万円に値上がりしていても、相続税の計算には「贈与時の2,000万円」が使われます。つまり、値上がりした1,000万円分には、税金が一切かからないということです。
ただし、暦年贈与と相続時精算課税制度のどちらが有利になるかは贈与期間や金額によって変わるので専門家へ相談することをお勧めします。
【具体的活用法】70代の男女に推奨する「3つの処方箋」
しずおか相続相談室が提案する「53項目の処方箋」の中から、特に効果の高い具体的な活用方法を紹介します。
① 【資産の移転】値上がりが期待できる不動産・株式の贈与
静岡市内の再開発予定地に近い土地や、将来性が高い企業の株式などをお持ちの場合、この制度は絶大な効果を発揮します。
やり方: 2,500万円の特別控除枠を使い、今のうちに名義を子供に変えます。
メリット: 相続時の評価額を現在の低い水準でロックできます。また、不動産の賃料収入や株式の配当金が直接子供の口座に入るようになるため、皆様の資産が増えて相続税が高くなるのを防ぎつつ、子供の生活を潤すことができます。
② 【生活支援】「年110万円」の非課税枠をフル活用した教育資金
「まとまった額はまだ渡したくないが、少しずつ資産を移したい」という方に最適です。
やり方: 毎年110万円をこの制度の基礎控除として子供や孫に贈与します。
メリット: 以前のルールでは、亡くなる前3年〜7年以内の贈与は相続財産に戻されていましたが、相続時精算課税の110万円枠は「持ち戻し」がありません。亡くなる直前の贈与であっても、確実に財産を減らすことができ、節税に直結します。
③ 【争族防止】特定の土地を確実に「長男」へ継がせる
「代々の土地を長男に引き継がせたいが、遺言だけでは不安」というケースです。
やり方: 生前にこの制度を利用して登記まで完了させます。
メリット: 私たちの専門家チーム(司法書士などが)確実に名義変更を行います。生前に名義が変わるため、亡くなった後に他の兄弟と「誰が継ぐか」で揉める余地をなくせます。ただし、他の子供たちのへの配慮が必要なため(遺留分等)私たちが数値をシミュレーションして対策を練ります。
【注意点】一度選ぶと「後戻り」できない
この制度を利用する上で最も重要な注意点は、一度選択すると「暦年課税(従来の贈与制度)」には二度と戻れないという点です。暦年課税と相続時精算課税制度のどちらを使った方が有利になるのかは贈与期間や贈与額によって異なります。贈与期間が長く、贈与額が多い場合は暦年贈与が有利になるケースが多くなるのですが、この点を考慮に入れずに相続時精算課税制度を選択してしまうと税負担が軽い暦年贈与に戻すことができずに余分な税金を払う結果になってしまいます。そのため、制度のメリットを最大限に引き出すためには、現在の財産全体を正確に分析し、数値化して比較することが不可欠です。

